『すくも湾 水産物フェア 2008』 に参加することになった私と松本料理長は
そのイベントのある3月9日の早朝、定置網漁船に同乗しました。
普段なにげなく扱っている天然鮮魚がいったいどんな風に獲られているのかを
経験することは 我々レストランのコンセプトである生産者の想いを料理を通して
たくさんのお客様に伝えたい、という大きなテーマを保持し続ける上で大切なことである。
私「とうとう、来たなぁ、まっちゃん。」
料理長 「テンション、あがるわぁ~~ッ!!」
ライフジャケットもばっちり決まった松本料理長。
朝5時。
夕べの旅の疲れも残っていたが二人とも
胸踊っている・・・
古満目(コマメ)という漁港は閑静な昔ながらの佇まいを残す風情ある港だ。
船はそこから出港する。
エンジン音と黒い排気ガス、海は凪いでいたが船はそれなりに波に揺られる・・・
私「酔いそやな・・・」
漁場まで40~50分、船は波しぶきをあげ2隻で潮風を切りながら進んでいく。
漁師さんたちは船の上で寝そべっていたりしゃがみこんで煙草をふかしていたり
おだやかにおだやかに漁場まで船は進んでいく・・・
店長「ふ~ん・・・思てたより漁ってのどかなもんやなぁ」
そう思ったのもつかの間、
にわかに漁師さんたちがそれぞれの準備に動き出す。
私「あ、・・・・ああ」
漁師さん「そこ!そこ!! そっち下がっとってぇっ!!!」
私 「あ、はい・・ うぁユれる! あ、すんません。こっちですか!?
あ、すんませんっ。こっちじゃまですねぇっ!?? あっち行きます??」
2隻の船が接近しながら仕掛けていた網を棒や手でたぐり寄せていく。
きらきら輝く魚達が宝石箱からあふれ出すように網の上で跳ねている。
漁師さん同士がお互いに大声を出しあい素晴らしいチームワークで次々に
魚を網ですくって船上に投げ込んでいく。
すごい。
すごい勢いだ!!
水しぶきとキューキューと鳴くイカの墨を全身に浴びながらその様子を
必死に見ていた。
ばしゃ!どすっ!!キューキューっ!!!
ざばーっ!ドン!!キューキューっ!!!
魚が跳ね、網が舞いとび、みるみる船に魚が上がっていく
その時。
私「あかぁーんっ!! イカの墨、顔めっちゃかかったぁ!!
めがねぇがぁ~!めがねぇっ!!!」
漁師さん「にいちゃん、そこどいてっ!!」
私「あ、すんません!じゃまですね!!! あ、見えへん・・・」
そうこうしているうちに漁は終え、ブルルンっとまたエンジン音を響かせ
港に向かう・・・
私「あかんっ。気持ち悪い・・・」
船酔い。
遠くに見える丘を見るようにして呼吸を整える。
ふと船上に目をやると先ほど獲ったばかりの天然ブリを漁師さんが
刺身にしてくれている。
漁師さんの豪快な手つきでさばかれた 天然ブリをまず料理長がいただいた。
料理長「これ、スゴイな・・・
これ、スゴイわ・・・」
パクパクと食べている。
なんとか船酔い気分がマシになってきた私も一口・・・
私「スゴイな。」
魚食べて “スゴイな” としか感想がでてこないのも自分にとって
初めてだったが、その時は正直それ以上もそれ以下もなかった。
絡みつくような脂がのった身は柔らかく、かといってべったりしたイヤな感じではなく
独特の脂くささというものはほとんど感じられず口の中で溶けていく感じだ。
カッコイイ。
そんな簡単な言葉で表現するのも失礼かと思うが、
この漁師さんたちがいるから我々があるんだ。
この人たちを守らなきゃ。
おこがましいにもほどがある想いだが、我々食を扱う仕事に
携わる者として素直にそう思えた。
ビジネスにおいて流通やマージン、漁協や仲買人さんもウルオわなければ
成り立たない世の中ではあるが、まず一番に漁師さんたちが
漁師をやって本当によかった、と思える社会的な意識が周りにどれだけ
必要か、を考えた。
後継者問題、生活レベル、過酷な作業・・・様々な問題がある中、
俺も漁師になりたいっ、という人がたくさん生まれる仕組みが必要だな、と。
我々レストランも微力ながら、何か社会貢献していきたい、という意識で
素材を料理してお届けしていきたい。
海だけではない。
野菜も肉も塩もワインも・・・
これからも届けていきたい。
生産者の想い。
つづく・・・